chapter2

【第10話/前篇】カンナさん

更新日:

6月も後半。

天気予報ではいよいよ秋田も梅雨入りしたとのことだったが、由利本荘市ではカラッと晴れた日が続いていた。

明日はいよいよ文化祭の日となった。すいはクラスの催し物の下準備をするため、朝早く学校に行かなくてはならなかったため、今日はあやめの家に泊めてもらうことになっていた。

放課後、文化祭の準備を終え、クラスメイトのゆりねと駅の方まで一緒に帰ることになった。

「すいちゃん・・・。本当にクレープ屋さんとたこ焼き屋さんの二つをやることになっちゃったね。明日は大丈夫かなぁ・・・。心配ですぅ。」

ゆりねは緊張した面持ちですいに話しかけた。

「うん!楽しみだね~!きっと大丈夫だよ。すい、お裁縫は全然ダメだけど、お料理するのは得意だから!」

すいは能天気に答えた。

ホームルームですいがとっさに答えたクレープとたこ焼きというのが、後々クラスで両方やる方が面白いなということになり、その流れですいが抜擢され、そして隣の席だったゆりねも調理担当として道連れになったのである。

すい) 「みんなには内緒にしてたんだけどタコ焼きさんとクレープさんのスペシャルコラボメニューも考えてあるんだぁ~♪」

ゆりね) 「えぇ!?だ、大丈夫かなぁ・・・?(すいちゃん凄く楽しそう・・・)」

そんな会話をしながら駅へと向かう二人の背後から「ブゥオオオオオォン」とバイクの音が鳴り響き、颯爽と駆け抜けて行った。

すい) 「わぁぁ!カッコいい!ゆりちゃん、今の!女のひとが乗ってたよね!?」

乗っていたのは若い女性で黒いライダースジャケットを身に纏いロングヘアをなびかせていた。

一瞬の光景だったがセクシーなボディラインが目に焼きつくほど印象的で、周りの下校中の生徒たちもザワめいていた。

「・・・わぁぁぁ。カンナさんだぁ~。ドキドキしますぅ。」

ふと、ゆりねを見ると目を輝かせていた。

すい) 「カンナさん??」

ゆりね) 「う、うん!松皮カンナさんって言ってね、鳥海山高校のOBで、巷では虎の子番長と恐れられた伝説のお方なのです!」

すい) 「虎の子番長・・・?わ、わぁ~。」

頭の中にたくさんのトラの赤ちゃんが駆け巡った。

すい) 「・・・はっ!・・・えっと、ゆりちゃんは色々と詳しんだねぇ~。」

ゆりね) 「カッコいい先輩とか可愛い先輩をついついチェックしちゃうのです!ドキドキですぅ~。カンナさん、噂ではとっても怖い人だって言われてるけど、本当はきっと、強くて情に厚くて優しいお方だと思うの!はぁぁぁん・・・。」

すい) 「うん!きっとそうだと思う!」

その後、興奮覚めぬゆりねから先輩たちの噂話やら武勇伝やらをさんざん聞かされながら駅に辿り着いた。

二人はここで別れ、それからすいはあやめの家へと歩いて向かった。

【第10話/中篇へ続く】

 

クラウドファンディング実施中!ご支援よろしくお願い致します!

 

-chapter2

Copyright© 黄桜すい物語 , 2024 AllRights Reserved.