すいの朝は早い。
早朝、おじいちゃんが外に行く準備をゴソゴソとしている音で目が覚め飛び起きて急いで農作業着に着替えおじいちゃんと一緒に牛の世話をしに行く。
最近では、牛の餌やりを任せられて、おじいちゃんは田んぼ周りの草刈りに行ったりもするようになった。
「ぺー太ぁぁ。おはよぉ~♪」
待ってました。と言わんばかりに子牛のぺー太は大きく首を振った。
「にゃーにゃー」
牛舎に住み着いた野良猫たちもすいに近寄ってきて甘えてくる。
「にゃんこちゃんたち、おはよ~♪」
すいの朝は昇ったばかりの太陽の光を浴び、ワクワクな農作業から始まる。
学校へ行くときには必ず水道の水を水筒に入れて持っていく。
この水道水は山の湧き水をそのまま引いてきた天然水なのだ。
「こんな美味しい水がタダで飲めるなんて!」と、今では大好きだったジュースすら飲まなくなり学校でも家でもひたすら水を飲みまくっている。
すいの通う鳥海山高校へはバスに乗り40分ほど。
羽後本荘駅のバスターミナルに着くと、従姉妹のあやめが出迎えてくれた。
あやめ)「すい!おはよう。」
すい)「あ!あやめちゃーん、おはよ~!」
あやめ)「ちょうどバスが来る時間だな~って思って待ってたんだ。」
すい)「わぁ~ありがとう~!・・・・ん?」
あやめの隣にいる同じ制服を来た背が高く外国人らしい少女がニコニコしながらすいを見つめていた。
「Good morning♪」
「あ・・・!えっと、ぐ、ぐもーにん!ですっ。」
東京にいた頃は普通に見慣れていた外国人だったがあまりに美しすぎる容姿に顔を赤くしてドキドキしてしまった。すると、
「Ahaha♪ ほんとだAyame,このコ可愛いね~!」
と流暢な日本語で喋った。
「んだべ~めんけべ~。」
あやめが方言全開で話していることから仲の良い友達だとすぐに察した。
あやめ「このコはへロンちゃん。私のクラスメイトだよ。」
へロン)「よろしくね!Sui♪」
すい)「は、はい!はじめまして。黄桜すいです!(うぁ~なんて奇麗なんだろぉ~)」
へロンは、へロン・プラム・亀田と言い、アメリカ人の母と、戦国時代から栄えてきた亀田藩領主の血を継ぐ父とのハーフである。
ノリが良く、明るく陽気なへロンにすいはすぐに馴染む事ができた。
へロン)「Sui,そのぶら下げている水筒には何が入ってるのぉ~??」
すい)「これはお水ですっ♪」
へロン)「Oh,ただの水??」
すい)「とっても美味しい魔法のウォーターなんですよ~♪」
すいはへロンの陽気なテンションにいつの間にか染まっていた。
あやめ)「ふふふ。へロン、ちょっと飲ませてもらいなよ。」
すい)「えへへ、飲んでみますか?」
へロン)「Wow!いいの?すっごく気になる~!」
「ごくっごくっ」
すいはへロンの水を飲む仕草がセクシーで見とれていた。
へロン)「Fantastic!! なにこれ!すごく美味しいよ!こんな水初めて飲んだよ~!」
あやめ)「すいのうちの水道から出てくる無料の天然水なんだって♪」
へロン)「Wow,Suiのおうちはすごいね~!」
「えへへ~。」すいはなんだか嬉しくなって、おじいちゃんとおばあちゃんの顔を思い浮かべた。
ハイテンションのへロンとすいはすっかり意気投合し盛り上がり、そこにあやめの絶妙なツッコミが入りとわいわいしながら三人で楽しげに学校へと向かった。
【第7話/後篇】へ続く
へロン・プラム・亀田(へろん・ぷらむ・かめだ)
■高校3年生/18歳
■身長:172cm
■通学:由利本荘市岩城地区(旧岩城町)から羽越本線で羽後本荘駅へ
■御殿鞠あやめの親友
■父/戦国時代に栄えた亀田藩の子孫・母/アメリカ人
■部活:バスケットボール部
■好きな食べ物:プラム