すいは、漁港まつりで出会った1学年上の元気で圧倒される迫力のあるリン子に刺激を受けた。
そして、月曜日。また学校が始まる。いつものように羽後本荘駅でバスを降りた。
「うおぉぉぉい!すいー!すいー!すーいー!!」
人目をはばからず大きな声ですいを呼んでいたのは、リン子だった。
「リ、リン子さん!?おはようございます!」
心臓が止まるかと思うほどの大きな声にびっくりしながらもリン子のハツラツとした顔を見て嬉しくなった。
「リン子さん、土曜日はありがとうございました。すい、とっても楽しかったです!」
丁寧にお礼を言うと、
「そんなかしこまるなって~!あははは。」
とリン子はすいの肩をポンポン叩いた。
すい) 「そう言えば、なぜすいの事を知っていたんですか?」
リン子) 「ん、あぁ~、それな。ウチのダチがさぁ・・・・んっ??」
すい )「えっ??どうかしました??」
リン子) 「なんだ?その変てこなブタ??」
リン子はすいの鞄にぶら下がっているマスコットを指差した。
すい )「はっ!ここここ、これはですね・・・えっとぉ~・・・(ドキドキドキドキ)」
リン子 )「・・・ブタだよな?これ?」
すいは純粋に聞いてくるリン子になんて答えようかと考えたが思い切って正直に答えた。
すい )「こ、これはですね、すいが作った牛です・・・子牛のペー太です~!今すいが育てている牛なんですぅ~!(やっぱり牛に見えなかったんだぁぁぁ~!)」
リン子 )「・・・・・・。」
すい) (ドキドキドキドキ)
リン子) 「あははははー!牛かよ!どう見てもブタだろ!しかもペー太って!?ネーミングセンスが!あっはっはっは~!」
するとすいは恥ずかしくなって顔を真っ赤にした。
リン子) 「・・・・あ。・・・わりぃわりぃ!えっと、これは牛だな!いやぁ~可愛いな~すいが作ったのか~。あはははは・・・」
すい) 「あの、えっと・・・。すい、リン子さんに出会ってパワーをもらった気がして何か頑張ってみたくなって、えっと、昨日作ってみたんですぅ・・・」
リン子) 「お、おう、そ、そうだったんかぁ。(チラッ)」
リン子は恐る恐るすいの顔を見ると真っ赤にして今にも泣きだしそうにうるうるしていた。
リン子) 「そ、そっか~!ウチに影響を受けてなぜか創作意欲が出てきて頑張ったんだな。すい良く頑張ったな!うんうん。だから、な、泣くなよ。な?(チラッ)」
すい) 「ご、ごめんなさい。すい、お裁縫得意じゃないんですぅ。(うるうる)」
リン子) (か、かわいいー!!)
リン子はすいの純粋な気持ちに思わず抱きしめたくなるのを抑え、頭を優しくぽん、ぽんと撫でてあげた。
・・・のだが、
リン子のヤンキーっぽい見た目は傍から見ると上級生が下級生をカツアゲしているようにしか見えず、通行人たちはそれを横目にそそくさと通り過ぎて行くのだった・・・。
「ちょっと!リン子、あんた何やってんの!」
そんなリン子に声を掛けてきた娘がいた。
「・・・・!? ・・・あ、舞。」
【第9話/後篇】へ続く