晴れた土曜日の朝。
早めの朝ごはんを食べてから、家族みんなでさつま芋やしし唐などの苗を植えや草むしりなどの畑仕事をした。
6月にしては日差しが強く空は青く澄んでいた。9時を過ぎたくらいでも畑仕事をしていると汗が噴き出てくるくらいだ。
「ふわわ~あっつーい!でも気持ちいいなぁ~!」
農作業着を着たすいは腕まくりをして軍手の甲で額を拭った。
「ちょっと早めのおやつ休憩にしましょう~♪」
と、ママが言うと、みんな待ってましたと言わんばかりに腰を上げた。
作業小屋の日陰で冷たい麦茶を飲みながら休憩していると、「ぶおおおぉぉん」と車の音がして近付いてくるようだった。
「おぅ、来たがぁ。」おじいちゃんがボソッと言って立ちあがった。
近付いてきた車は近所のげんじろじっちゃだった。
「おー!すいちゃん、お手伝いだがぁ?偉いなぁ~。」
「うん!げんじろじっちゃは?」
すると、すいのおじいちゃんをチラっと見て「遊びに誘われでな~」とガハハっと豪快に笑った。
「え?おじいちゃんどこかにお出掛けするの!?」
「んだぁ。漁師のトモダヂから魚けるって言われでなあ、漁港まづりさ行ってくる。」
「え~!お祭り!?すいも行きた~い!」
おじいちゃんはいつものようにニカっと笑って「せば、一緒にいぐが。」と言ってくれた。
そして、すいとおじいちゃんとげんじろじっちゃの3人で漁港祭りが開かれている西目へと向かった。
途中、休憩がてら西目の道の駅に寄ることになった。
そこには「ラベンダーソフト」という珍しいソフトクリームがあって、よだれを垂らしそうになったすいを見てげんじろじっちゃが買ってくれた。
「わ~!ラベンダーのいい香り!げんじろじっちゃ!これ美味しい!ありがとう。」
「なんもだぁ~すいちゃんのうめそうに食ってるどご見でくてな~ガッハッハッハ。」
この季節の西目では漁港まつりの他にも「ラベンダーフェア」というイベントが西目の道の駅近くの「ハーブワールドAKITA」で開催されていてそこにも立ち寄りラベンダーの摘み取り体験をしたり、すいは大喜びだった。
ちょうどお昼時だったのでバイキングでお腹を満たし3人はようやく西目漁港へと向かった。
バイキングに不慣れな年寄り二人はすっかり疲れてしまったが、すいの楽しそうな笑顔に元気が出たのだった。
「漁港まつりでは何が食べられるのかなあ!」
「ガッハッハッハ!すいちゃんまだ食えだなが!?」
「まんつ、すいだば食いしん坊だごど~」
すいの無邪気さに年寄り二人は少し若くなったような気がして楽しかった。
【第8話/後篇】へ続く