ふと気付くと、高い木のてっぺんに浮いていた。
強くイメージした、行きたかった場所、それは、前におじいちゃんと来た大イチョウだった。
あの時の不思議な心地よさに魅かれ、また行きたいと思っていた場所だ。
「浮いてる・・・高い・・・!ほんとに大イチョウに来ちゃった・・・」
すいは芽生え始めた柔らかいイチョウの葉をそっと撫でた。
「はぁ~。落ち着くなぁ・・・おじいちゃんの好きな場所。えへへ。」
あの時に感じた人肌の様な温もりをまた感じた。
「よぐ来たね~」
誰かの声が聞こえた。
「え?誰??」
木の下には小さな女の子が立っていた。。
大イチョウのてっぺんからふわりと降りて近寄ってみると、見た感じは6~7歳くらいの黒髪でグリーンの目をした可愛らしい女の子だった。
「すいちゃん、よぐ来たね。」
その優しい声、話し方、まさかとは思ったが、すいは堪らず涙が溢れ出てきた。
「おばあちゃん!?」
「んだよぉ~。すいちゃん。まだ会えだね。」
「おばあぢゃーーーーん」
その小さな女の子に抱きついた。間違いなくおばあちゃんだった。
あの温もりはおばあちゃんだったから心地よかったのか・・・だから、おじいちゃんはなんだか落ち着くと言っていたのか・・・と思った。
すいはしばらく幼女になったおばあちゃんにくっついていた。
おばあちゃんの面影を少し感じる小さな女の子、なぜ子供の姿になったのか尋ねてみると、昔、小さい頃にここでおじいちゃんと初めて出会ったからなんじゃないかと教えてくれた。
「ガタガタガタ・・・・」
物音で目が覚めたすいは、ベッドにいた。
「あれ?・・・不思議な夢を見たなぁ・・・でも、いい夢だったなぁ~」そう思いながら、急いで朝の牛の世話をしに行こうとしていたおじいちゃんのところへ行った。
「おはよう、おじいちゃん。」
「あら!今日も早起ぎだなぁ~」
「あのね、おじいちゃん。」
「うんー?」
「すいね・・・夢で水神様に会ったんだよ~。滝のところで・・・。」
少し驚きながらおじいちゃんはこう言った。「んだが。神様と話したが?」
「え?・・・う、うん。それでね、変な杖をもらったよ・・・?」
「あっはっはっは。」おじいちゃんは急に笑い出した。
「ん??どうしたの?」
「昔、ばあちゃんも同じ事言っでだんだよ。よぉぐ不思議な話するがったんだ~。」
それを聞いたすいは、昨夜のあの出来事は夢じゃなかったのかもしれないと思えてきた。
ふと仏壇を見ると声が聞こえてきそうなおばあちゃんの笑顔があった。
「おばあちゃん・・・」
そう呟き、可愛がっている子牛のペー太に会いに今日も牛舎へ飛び出していった。
【第一章・完】
黄桜すい(きざくら・すい)
■高校1年生/16歳
■誕生日:5月5日
■身長:158cm
■由利本荘市(旧東由利町)鳥海山高校まで羽後交通バスで30分、徒歩10分
■元気な子・食いしん坊・猫や動物が好き
■農家を夢見る・子牛を育てている
■特技:料理
■部活:なし(おじいちゃんの牛や畑の手伝いが楽しみですぐ帰宅する)
■好きな食べ物:米(あきたこまち)・ソフトクリーム
■好きな花:黄桜
■旧東由利町の特産品。土産:フランス鴨・ボツメキビール(ボツメキ湧水の地ビール)