すいはすっかり疲れてしまい、ベッドに寝そべりながらぼーっとしていると、いつの間にか眠ってしまった。
小さい頃の記憶だろうか。おばあちゃんと一緒に畑で草むしりをしている夢を見た。
「おばあちゃんのお仕事は やしゃいをいーっぱい作ることなんだね~!」
「んだよ~。すいちゃんの大好ぎなトマトやトウキビも、こんな小っちぇ種からこ~んた大っきぐするんだよ~。」
おじいちゃんとは対照的にいつもニコニコしていた、あの大好きなおばあちゃんがいた。
すい )「しゅごーい!早く食べたいな~!これもう食べれる?」
おばあちゃん )「これはまだだなぁ~大っきぐなったら東京さいっぺ送ってあげるがらね。」
すい )「そっかぁ・・・すいはすぐには食べれないんだねぇ・・・」
おばあちゃんは困りながら「いっぺ送ってあげるがらね、すいちゃん」と言ってすいの頭を撫でた。・・・するとすいは、
「すいも農家になる!おばあちゃんと一緒に美味しいものいっぱい作る!」と大きな声で叫んだ。
・・・ふと目が覚め、
「あ・・・すい・・・そんなこと言ったんだっけ・・・」
と思った。
「おばあちゃん・・・すい、やっぱり農家になりたいなぁ~。」
そう呟きながら見ていたのは、寝ている自分の姿だった。
「・・・えっ!?あれっ!!?」
どう見ても寝ている自分の姿だ。
「はっ・・・!幽体離脱?」
訳も分からず周りをキョロキョロすると外が青白く明るくなっていた。
「滝の方だ・・・」
そう思った瞬間、家のそばにある滝に立っていた。やっぱり夢かと思ったすいは何も驚きはしなかった。
そして、滝の横に佇んでいる祠から青白い人魂のようなものが現れ何かを話しかけているようだった。
「あ・・・青白い人魂・・・」
すいはパパが言っていた水神様の話を思い出し、ピンときた。
「あ、あのぅ・・・水神様デスカ??」
何語とも言えないゴニョゴニョとした音の様な声はやがてすいの脳内に伝わってきた。
((「如何にも。わしが水の神じゃ。ふぉっふぉっふぉ。お主、わしと話せるようじゃな。))
実際にそう言ったのかどうか定かではないが、すいの脳内にはそう変換されて伝わっていた。すいのイメージしたコテコテの神様像なのだろう。
「へ、へぃ・・・!」ガチガチに緊張しているすいは神様に失礼のないようにとありったけの敬意で返事をした。
((黄桜すい、今からお主に神の力を授けるぞい。))
すいは青白い光に包まれて、気付くと手には杖、和と洋が織り交ざった衣装を纏っていた。
「わぁ!なにこれ!・・・可愛い~!」
これは水神の趣向でなはく、すいの記憶やイメージが具現化した姿である。
((これからは水の女神として、農家の力になり、困っている人々を助け、元気にするんじゃぞ。))
「へぃ!・・・あ、でも・・・どうやって・・・」
((困った時は杖を振りなさい。力が湧き出て何かが起こるはずじゃ))
もはや夢だと信じこの状況をすっかり楽しんでいたすいは、心の中で3年間テニスに打ち込んできた経験がここで役に立つなんて!とノリノリだったが、
((それは違うぞい))
と水神に突っ込まれたのだった。
「あ・・・心の中が聞こえてた・・・恥ずかしい・・・」
そして、
((すいよ、今一番行きたい場所を強く思ってみなさい。))
と言って消え去ってしまった。
「一番行きたいところ・・・」
そしてすいは強くイメージしてみた・・・。
【第5話/後篇へ続く】