朝ごはんを食べ終え、土曜日も出勤のパパを見送ったあと、ミルクティを飲みながらまったりとしていた。
ママから一緒に食料品を買いにスーパーへ行かないかと誘われたが、何やらおじいちゃんもどこかへ出掛けようとしていた。
すい )「あ、おじいちゃんどこに行くの?」
おじいちゃん )「んん?ちょっとな~」
いかにも付いていきたいと言わせんばかりの含みを持ったニヤニヤ顔で答えた。
すい )「えー!どこー!?すいも行きたーい!行きたいよー!」
おじいちゃん )「せば、一緒にいぐが~?」
おじいちゃんにまんまと乗せられたすいだった。
ママは笑って「いってらっしゃい」と見送り、二人は軽トラックに乗って一足先に出かけて行った。
着いたところは農協のガソリンスタンドだったのですいはきょとんとしたが、ついでにトラクターの軽油を買いに来たのだった。
すい )「ねぇ、おじいちゃん、これからどこ行くの~?」
おじいちゃん )「いいどごさだ~(いい所にだよ)」
まだ秘密にしていたいようだった。
「着ぃだよ。」
軽トラで走ること数分、何かありそうな雰囲気はない、普通の住宅地に着いた。
「ん~???」すいは訳も分からずおじいちゃんの後に付いて行った。
畑のある細い道を進むと古びた鳥居が見え、そして古びた神社がひっそりと佇んでいた。
「・・・・?」
「おじいちゃん、神社にお参りしたかったの?」すいにはおじいちゃんの意図が分からなかった。
「神社の裏さ行ってみれ?(行ってごらん)」
言われるとおりに行こうとしたが、古びた神社に厳格な雰囲気を感じ恐る恐る進んでいった。
すると、大きな大きな木が立っていた。
「えぇ・・・?」
あまりの大きさに足がすくんだ。
「イチョウの木だ。樹齢さんびゃぐ年。」
おじいちゃんが背後から教えてくれた。
「大きい・・・」すいは棒立ちでただただ見上げていた。
「歩いて来たときは何も見えなかったのに・・・」
樹高30メートル、幹回り7メートル、樹齢300年の大きなイチョウの木はひっそりと立っていた。
おじいちゃんもイチョウの木に近づいていって、右手を添えて見上げて言った。
「わがらねども、こさ来るど、なんだがおぢづぐんだ(落ち着くんだ)。」
そして二人は自然と木にもたれ目を閉じていた。
何か穏やかで優しい、人の温もりの様なものを感じた。
【第3話・終わり】
岩舘の大イチョウ、乳房の木とも呼ばれている。