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【第8話/後篇】漁師と猟師

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西目漁港に着くと駐車場にはたくさんの車が停まっていて既にまつりの賑わいを感じられた。

「わ~!おまつりだ~!」

 

 

たくさんの大漁旗が掲げられ風で大きく揺らめいていた。

やがて、浅黒く日焼けした白髪でパンチパーマのおじいさんがこちらに近付いてきた。

「おぅ!おめだやっと来たが!」

威勢のいい声にすいはびくびくした。

「おう。おめが来いっていうがら来てやったど~。」

とおじいちゃんも返す。どうやらこの人が漁港まつりへ招待したおじいちゃんの友達の漁師だった。

「そごのお譲ちゃん、誰だ?」

漁師は無遠慮に勢いよく聞いてきた。すいはおどおどしながら答えようしたら

「おれの孫だぁ。」とおじいちゃんが答えてくれた。

すると漁師は少し唖然として、「んだがぁ・・・。道理で。」とすいの顔を覗き込んだ。

「は、はじめまして。き、黄桜すいです。」

「あははは!そんた緊張すんなでぇ!すいって言うのが。おめはおばあちゃんさそっくりだな。」

おばあちゃんの事を知っているようだった。

おじいちゃん)「今は息子夫婦が東京から戻ってきて一緒に暮らしてる。」

漁師)「ほう、何?息子左遷されだなが?して、あの山奥で暮らしてんのが?あははは。」

どこまでも口の悪い失礼な年寄りだ。

おじいちゃん)「おれは山の猟師だがらな。山さ住んでる。」

漁師)「無口な山の猟師のどごがいがったんだがな~」

すい)「???」

おじいちゃん)「人の話もろぐに聞がねお喋り坊主よりはいがったんだべな。」

漁師)「うう゛っ・・・・!」

どうやら昔のおばあちゃんの話をしているようだった。

あとでげんじろじっちゃが教えてくれたことだが、二人はすいのおばあちゃんの恋のライバルで昔から仲がいいのか悪いのか良く分からない不良コンビだったらしい。

そんな奇妙な会話を聞いていると、突然遠くから「おおおお!」という大きな歓声が聞こえて来た。

魚の掴み取りのイベントをやっている方向だった。

 

 

見ると一人の少女が大きな真だこを掴み高く突き上げていた。

そして、大きなタコの足が腕に絡みつきながらももう片方の手を頭に掛け一気にひっくり返して一瞬にして絞めたのだった。すると会場にはさらに歓声が上がり大いに盛り上がった。

「すごい!!タコさん手で掴んで一瞬で絞めちゃった・・・すいと同じくらいの子かなぁ?」

などと興奮しているすいに漁師が「あれはおれの孫だ。すんげぇだろ?」と言った。

「え?お孫さん!?」

すると会場からその少女が

「お~い!じい!掴んできたぞ~!」

と言いながら走ってきた。その子もまた日焼けした元気な性格で「なるほど!」と納得した。

「じい!真だこ掴んできたから千円くれ!」

「おぅ、よぐやったな。まさがほんとにやるど思わねがった。」と言いながらポケットから千円札を出してその少女に渡した。どうやら賭けをしていたようだった。

二人の威勢のよさに驚いていると、

「あれ?お前、黄桜すいだろ?」

と話しかけてきた。

「え?は、はい!・・・??」

「だよな。ウチは浜梨リン子。鳥海山高校ヨット部の2年生!よろしくな!」

そして間髪入れずに

「ウチのじいとお前んちのじいさん知り合いだったんだな~あははは~」と何だかんだと話し続けるのだった。

(さすが漁師のおじいちゃんと似ている・・・。ゴクッ)

すいはリン子に連れられて魚の掴み取りをさせられたり、おじいちゃんは漁師にお酒を飲まされすっかり酔っぱらってしまい、見かねたげんじろじっちゃは気を利かせてすいの家に少し遅くなるという電話入れてくれたのだった。

夕日が日本海へと沈み込む頃、なまはげ太鼓が鳴り響き、空には花火が打ち上がりフィナーレを迎えた。

 

 

漁師のおじいちゃんは大量の海の幸を、すいのおじいちゃんはたくさんの山の幸をお互いに交換して帰路についた。

熱気溢れる漁港のまつり、威勢のいい漁師、いきなり近しく接してくる女子校生。

海辺で暮らす人たちはこんなにも違うんだなぁとすいは驚き、刺激を受けたのだった。

 

【第8話】終わり

 

浜梨 リン子(はまなし・りんこ)2年生
■高校2年生/17歳
■身長:157cm
■通学:由利本荘市西目地区(旧西目町)から羽越本線西目駅から電車で羽後本荘駅へ
■家:おじいちゃんが漁師
■特技:水泳・海釣り
■部活:ヨット部
■好きな食べ物:魚介類・りんご
■好きな花:はまなす・ラベンダー

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