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【第1話/前篇】黄桜すい、東京から秋田へ。

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「黄桜すい、東京から秋田へ。」

 

今日が東京最後の日。すいは生まれ育った東京と、中学生活を仲良く過ごした友達に別れを告げ、東京駅始発の秋田新幹線こまちに乗った。パパとママの生まれ育った故郷へ一家での引っ越し。

そして今日が、東北地方秋田での新生活の始まりの日である。

 

-新幹線に揺られること2時間、仙台駅へ、それから1時間半後には盛岡駅。そこから秋田新幹線こまちは秋田大曲駅へ到着。-

 

桜が散り始めた東京からまだ桜も咲いていない北国秋田へ、すいはワクワクしていた。

「んん~!やっぱり空気が・・・・・・美味しい~!!」食いしん坊のすいは3月の澄みきった冷めたい秋田の空気をパクパク食べるかのように味わった。

おばあちゃんの葬儀以来、実に3年ぶりの秋田である。

大曲駅に降り立つと、見知らぬおじさんが車で迎えに来ていた。どうやら、おじいちゃんは軽トラックしか持っていないので代わりに迎えを頼んだようだった。

パパ )「どうも、お久しぶりです。」
ママ ) 「お迎えに来ていただいてすみません。これからお世話になります。」
おじさん ) 「いぐ来てけだな!疲れだべ?(よく来てくれたね、疲れたでしょ?)」

大人たちがあいさつしている横でまだ空気をパクパクしていたすいにおじさんが話しかけてきた。

「しぃちゃんだが?おっきぐなったごど~!」

すい )「???」
ママ )「ほら、おじいちゃんの田んぼを手伝ってくれてる、
すい )「あ~っ!げんじろじっちゃ~!」

「んだんだ~!いぐ来たなぁ~!あっはっはっは~」

げんじろじっちゃの姿はもうすっかり白髪頭になり少し痩せこけ、すいの記憶とはまるでかけ離れていたが、屈託のない笑顔と大きな体を見て昔の記憶が蘇ってきた。
おじいちゃんとは猟友会や農業を共にする近所の仲間で、小学校が長期の休みになるとパパの実家に滞在していたすいは、このげんじろじっちゃによく遊んでもらっていたのだ。

 

-秋田県由利本荘市-

大曲駅から車で走ること約40分。由利本荘市にあるパパの実家へ到着した。ここは、市の中心から外れた東由利という小さな町。主に牛や米、葉タバコ農家が多く、かつて盛んだった農業も今では高齢化が進み、いわゆる少子高齢化、過疎化が進む "なにもない" 町である。

 

パパの生まれ育った家は、静かで穏やかな山や木が手を伸ばせば届きそうな自然と密接した環境にある。

久しぶりに見たおじいちゃんの家は少し雰囲気が変わっていた。

「おじいちゃ~ん!ただいま~!・・・あれ?」

かやぶき屋根の古民家だった見た目はそのままに家の中は現代風に様変わりしていた。

パパとおじいちゃんがお金を出し、すいとママが快適に過ごせるようにと密かにリフォームしていたようだ。

すいは、田舎暮らしを決意したパパの意志の固さを改めて実感した。

「あ・・・良かったぁ~。えへへ。」

すいの大好きだった囲炉裏は奇麗になって残されていた。

そして、周りをきょろきょろと何かを探す。

 

「あ・・・・

 

・・・おばあちゃん、ただいま。」

 

仏壇を見つけたすいは、遺影を見つめ、白い吐息でそっと静かに声をかけた。
優しくておっちょこちょいで可愛いかった、すいの大好きなおばあちゃん。

おばあちゃんの葬儀以来、3年ぶりの再会。

まだ桜の咲かない3月の寒い中、ふわっと包み込まれるような温かい風を感じた。

 

【第1話/後篇へ続く】

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